ニューアルバム『THE END』のリリースを受けて行われた全国ツアー、「BLUE ENCOUNT TOUR 2017 break “THE END”」が、福岡国際センター公演でファイナルを迎えた。
ライヴはアルバム『THE END』の1曲目、かつタイトルチューンである“THE END”からスタート。〈終わらせて初めて 動き出す鼓動がある/立ち上がれ そのすべてに始まりを告げろ〉とヴォーカル田邊は唄う。ちょっとひねくれていてネガティブ、でも、本当は真っすぐで前向きな思いに溢れている。会場を埋めた熱いファンたちの思い、そしてバンドの、そして自分自身のテンションを静かに、しかし確実に高ぶらせていく。
そして2曲目は「HEART」。ライヴもアルバム通りの曲順で雪崩れ込み、バンドと観客のテンションは一気に爆発。その爆発の中で〈自分の鼓動を聞くのさえ辛いんだ〉と田邊は唄うのだ。さっき唄った「THE END」とは打って変わったようなことを言う、田邊の心の混沌をそのまま叩きつけたような曲だ。それもまた観客を熱くさせ、心を打つのだ。矛盾と混沌に満ちた喜怒哀楽、さまざまな思いすべてが本当の思いなのだということ。そしてそれはそのまま『THE END』というアルバムの持つ多彩さへとつながっている。
それはこのツアーにおいて、ライヴ中盤の流れの華やかさとしても現れていた。「TA.WA.KE」「スクールクラップ」といった悪ガキ感満載のビートパンク・チューンで会場をやんちゃにかきまわす一方で、「涙」というラブソング、「city」というラップチューンで泣かせる。そしてそんな両極端を、彼らはスタイリッシュな全英語詞の極上パワーポップ・チューン「LOVE」でサラリと滑らかにつないでしまう。序盤と終盤の盛り上がりはもちろん、こうしてライヴ中盤においても隙のない盛り上がりをもたらすことができるのが、『THE END』というアルバムの魅力であり、今のブルエンのライヴの最大の強みとなっているのだ。
そんな強さに、ツアーファイナルらしい完成度と、地元・九州の会場という「ホーム・アドバンテージ」がこの日のライヴに加わっていた。田邊は序盤のMCから「このツアー、最速で愛を感じる、ありがとう。地元って強えな……ただいま帰ってまいりました!」と感情を高ぶらせた。彼らの故郷である熊本を含め、九州における初の大規模会場でのワンマンということもあり、多くの観客が詰めかけていた。地元で初めてのワンマンということで緊張感に満ちているものの、また別の「地元らしさ」、肩の力を抜いた、自由な遊び心も感じられた。
メンバーそれぞれのキャラクターが今まで以上に際立った今回のツアー。辻村の漢気溢れるベースと観客の煽りは凄みを増す一方で愛嬌もたっぷり。ギター江口は、長身のロック・ギタリストとしてのカッコ良さとともに、ステージのヘリに腰掛けニコニコとギターを弾く姿などは今まで以上の親しみやすさを感じさせる。そしてドラム高村はパフォーマンスが元気いっぱい。誠実なキャラクターだが、どこかに必ず愛すべきズッコケ感を伴っているところが、まさにブルエンそのものである。
でもやっぱり、このバンド、このツアーを総括するのは、田邊。歌で踊らせて泣かせて熱くさせて、MCでボケで突っ込んで、そうしてライヴ本編の最終盤で彼は言った。「このライヴ、売り切りたかった。枚数がすべてじゃないってことをこの素晴らしい光景が教えてくれたけれど、満員の会場でやりたかった」。ZEPP FUKUOKAがない今、無謀な挑戦と言われるかもしれないけれどこの福岡国際センターでやることを決めたのだそうだ。こうして今、ZEPPのキャパをはるかに超えるたくさんのお客さんが集まってくれたけれど、いつかまた必ずここでライヴをやって、ここを満員にしてみせる、と彼は言った。
幕張メッセ公演を含む、ブルエン史上最大規模のツアーはこうして終わった。大成功ではあったが、一方でブルエンはまだまだこれからのバンドだ、ということも示すツアーファイナルだったと言える。
今後について、マキシマム ザ ホルモン「耳噛じる真打 TOUR」 の福岡、熊本の2公演にゲスト参加し、福岡のフェス「NUMBER SHOT」への参加が発表された。そして田邊は「まだ言えないけど、いろんなことを計画している。楽しみにしてほしい」と言った。すべてはまだまだこれからなのだ。「自分たちは“終わりを壊す旅”をずっと続けてきた」とも彼は言った。そんなブルエンの旅は、これからも続くのだ。
Photo:浜野カズシ
■Information
BLUE ENCOUNT
TOUR 2017 break “THE END”
2017/5/7(日) 福岡国際センター
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