叙情的な歌唱と広がりのある歌詞世界で人々を魅了するシンガーソングライター、やなぎなぎ。4月20日には約1年5ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバム「Follow My Tracks」の発売も発表されるなど、注目の集まる彼女の音楽キャリアについて、迫ります。
動画投稿サイト黎明期のスター
彼女が音楽活動を開始したのは2006年。当時はライブハウスやインターネット上での活動が主でした。その活動の場の一つが、当時設立され間もなかったニコニコ動画。今でこそ、アニメソングやVOCALOID使用楽曲をカバーする行為は「歌ってみた」というジャンルとして確立されましたが、この頃はまだまだこれからという時代。
肩書きが一切関係ない、純粋に声だけが評価される場で人々を魅了していった彼女は、ニコニコ動画黎明期の立役者と言えるでしょう。
「君の知らない物語」旋風
そんなオンラインでの活動がきっかけとなり、2009年「メルト」や「ワールドイズマイン」といった初音ミク使用楽曲を生み出したクリエーター集団、supercellにゲストボーカルとして「nagi」名義で参加することになりました。
1stシングル「君の知らない物語」は大ヒットアニメ「化物語」のエンディングテーマとして制作された楽曲で、みずみずしい青春を思わせるような歌詞と疾走感のあるサウンドは大きな評判を呼び、既存のファンの間にとどまらない、爆発的な広がりを見せていきました。オリコンシングルデイリーチャートのトップ20位以内を発売から2か月以上にわたりキープ・最新のカラオケランキング(2016年2月現在)でもTOP30位以内にランクインし続けているあたり楽曲の人気の高さが伺えます。その後もシングル「うたかた花火/星が瞬くこんな夜に」アルバム「Today Is A Beautiful Day」などに参加。
「やなぎなぎ」の名前とともに
そして2012年2月、やなぎなぎ名義として「ビードロ模様」でメジャーデビューを果たします。
活動開始以来、supercellで活動していた期間も楽曲制作を行っていましたが、メジャーデビュー以降リリースされた曲の大半の楽曲でも作詞を担当。アニメ「ブラック・ブレット」のエンディングテーマ「忘れない為に」等、何作かは作曲も担当しています。先述の「ビードロ模様」もアニメ「あの夏で待ってる」のために書き下ろされたもので、アニメ本編の世界観が溶け出したかのような爽やかな歌詞は、アニメタイアップだからこそ生まれた、彼女にとって挑戦的ともいえる内容に仕上がっています。
メジャーデビュー初期は、人見知りということでPVでもほとんど顔出しをしてこなかった彼女ですが、2014年には上野恩賜公園水上音楽堂にて野外フェスを開催するなど、徐々に現実世界のライブシーンでも存在感を高めています。2016年2月現在、既に12枚ものシングルをリリース。テレビアニメやゲームだけでなく、テレビ番組のオープニングにも起用されたタイアップ曲はゆうに30曲を越えています。
ここまで求められる理由は、彼女が持つ澄んだ水の流れを思わせる歌声の魅力にあると思います。
supercellのコンポーザーのryoも称賛する、透明感のある美しいソプラノ。それが青春の爽やかな色を表現する時もあれば、仄暗い幻想世界を想起させる時もあります。確かな個性がありつつも、楽曲に迎合できる柔らかさは、確かな強みになっています。
彼女本来の作風は後者、楽曲でいうと2ndシングル「Ambivalentidea」のような世界観に由来しているのですが、前者のような楽曲世界にも進出できたのは、supercellとの、さらに言うと動画投稿サイトとの出会いが影響しているとも言えるでしょう。
音楽シーンの新たなる重要人物とも言える彼女ですが、4月24日からは全国8都市を巡るツアーが始動します。やなぎなぎの世界に直に触れられるこの機会を逃さずに、その目で確かめてみていただきたいです。
文:囲(SHUTTER)
やなぎなぎ オフィシャルWEBサイト http://yanaginagi.net/
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一度聴いたら忘れられない繊細な声質と、印象的な楽曲の世界観が支持され、活躍の場を広げ続ける実力派ポップシンガー、やなぎなぎ。アニメ界のフィールドでも活躍する彼女が、今回の「MOSHI MOSHI NIPPON FESTIVAL 2015 in TOKYO」(以下、「もしフェス」)第1日目「MOSHI ANI」のメインステージに登場しました。そのライブ直前、慌ただしさの合間を縫って強行された直撃インタビューをお送りします。
――もうすぐ出番ですね。「もしフェス in Tokyo」はいかがですか?
やなぎなぎ:シンガポールでの「もしフェス」にも出演させていただいて、たくさんの外国人の方と触れ合わせていただいたのですが、今回もたくさんの外国人の方々に聴いていただけるのがとても楽しみです。それと、「in Tokyo」ではもちろん日本の人たちもたくさんいらっしゃると思うので、海外のみなさんと日本のみなさんが一緒になって楽しんでくださっている姿を見られたらいいなと思っています。
――シンガポール公演で感じたことはありますか?
やなぎなぎ:今、東南アジア全体がアニメのイベントで盛り上がっていて、シンガポールもそういう国の一つですよね。ライブで、最初はMCを英語でやってたんですけど、ときどき英語を忘れてしまって、日本語でしゃべったりしたんです。それでもすごく笑ってくださって、日本のことをご存知なんだなと嬉しくなりました。
――お客さんの反応や盛り上がりは?
やなぎなぎ:日本だと、最初のうちはすごくシャイな方が多いんですけど、海外は最初から「ウオーッ」って感じでしたね。ですので、こっちも釣られてテンション上がっちゃいました。
――「もしフェス in Tokyo」と、国内の他のフェスとでは、どんな違いがあると感じましたか?
やなぎなぎ:いちばんの違いを感じるのは、「発信している」というところですね。あとは、ライブの他にも色々なブースが出ていたり、カラオケがあったり、色々なものが合わさった全体的な盛り上がりを「もしフェス in Tokyo」では感じます。
――興味のあるブースなどはありました?
やなぎなぎ:私、フエキくん(工作糊で有名なFUEKIのキャラクター)が大好きなんです。今回は会場にフエキくんが来ていて、大喜びしちゃいました!
――「もしフェス」以外でも海外公演は経験なさってるんですか?
やなぎなぎ:HYPER JAPAN(ロンドンで開催される英国最大のクールジャパンイベント)ですとか、そういうフェス形式のものでしたらあります。一番最近だと、AFAID(Anime Festival Asia Indonesia、インドネシアのクールジャパンイベント)ですね。2015年12月に香港でワンマンライブをすることになっています。
――海外の方から直接に反応が届くことってあります?
やなぎなぎ:そうですね、Twitterですとか、最近はオフィシャルのWebの方にも海外の方からメッセージをいただくことが増えています。
――そういう方々に対して、ご自分の音楽をこんなふうに楽しんでほしいという希望はありますか?
やなぎなぎ:私はけっこういろんなジャンルの曲を歌っているんですけど、その中で一曲でもいいからお気に入りの曲ができてくれたらいいなって思っています。そうやって入口になった曲から、さらにほかの曲も聴いてもらえるようになれば言うことないですね。
――やなぎなぎさんにとって、J-POP CULTUREとはどんなものでしょうか?
やなぎなぎ:最近びっくりしたのが、インドネシアでのライブで、みなさん私の曲を日本語で覚えてくださってるんですよ。それで、こちらがなにも促さなくても、サビを大きな声で一緒に歌ってくださるんです。
私のフィールドがアニメ系っていうこともあるのかもしれませんけど、日本語の歌詞をそのまま覚えてくださってるのって、とても嬉しいことですよね。こんな答えでいいのかわかりませんが、そういう感じでもっともっと日本語の歌が広まっていってくれたらいいなと思いますね。
――これから行ってみたい国や街ってありますか?
やなぎなぎ:個人的には、ドイツに行ってみたいですね。洋館とかが好きで、古城とか、ロマンチック街道とか、憧れの国なんです。ドイツの古城でこぢんまりとしたライブをすることが夢です。
――今日は出番前のお忙しい中、ありがとうございました。今からのライブ、楽しみにしています。
やなぎなぎ:はい、ありがとうございます! がんばります!
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写真:向山裕太、文:タナカトシノリ(SHUTTER)