アメリカ、ヨーロッパから逆輸入! 今日本でも話題の東京発サイケデリックバンド幾何学模様(Kikagaku Moyo)。
2012年に結成。2013年にはセルフタイトルアルバムをギリシャの〈Cosmic Eye Records/ Sound Effect Records〉からリリース。その後アメリカやヨーロッパで注目があつまり、2014年4月にはEP 『Mannatus Clouds』をアメリカは〈Captcha Records〉、イギリスでは〈Cardinal Fuzz〉からリリースしています。 現在では、世界中を飛び回っている彼ら。アメリカツアーやイギリスツアー、さらに世界中のフェスではヘビーでアシッドかつシタールのメロディアスな音楽で会場を多いに沸かせています。
Interview : Go Kurosawa(Kikagaku Moyo)
ワケわかんないバンドがやりたくて、怪しそうな奴らに声をかけた
「幾何学模様」というバンドの始まりから現在に至るまでのことを聞かせてください。まずバンド結成のきっかけは?メンバーとの出会いとか。
そもそも僕が海外に住んでいたんですけど、2011年に日本に帰ってきて、地元でスケボーをしていたときにTomo(Vocal/Guitar)と出会って、ちょうど「これからアメリカ行く」って言ってて、もともとアメリカに住んでいたということもあって色んなことを話すようになったってのが、まずはじめですね。そこからすぐTomoがアメリカに行っちゃったので、たまに連絡を取り合ってくらいの関係だったんですが、2年くらいで帰ってきて、帰ってきたその日に会ってなぜかスタジオ入ろうって流れになって、入ってみたんですよ。お互い音楽好きだしねくらいの感じで。
軽いノリだった?
そうですね。ほんとなんとなく。それでスタジオ入ったら全然ギター弾けないんですよ。でもなんか面白くなりそうって感じたのと、おれもちょうどドラムやりたいなって思ってて。
どんなバンドやろうとかって当時からあったんですか?
ワケわかんないバンドがやりたくて、とにかく人を集めて、ダンサーとか絵を描いてるやつとか外国人とかいれてやってみようとか考えていました。技術がなくてもいいから好きなことをやりたかったので、とにかく僕ら二人以外のメンバーを探そうってなって、まず大学で怪しそうなやつに声をかけてみることから始めてみたんですよ。じゃあ校内で自動販売機の音を録音している奴がいて、これはヤバい奴がいると思って話しかけてたのがGuy(Bass)でした。「バンドやってるの?」って聞いたらソロで音楽やっててベースはできると。同じタイミングで外国人のアンジーという女の子がボーカルとして加入してライブをやり始めたんです。
じゃあはじめはその4人だったんですね。
そんなタイミングで、Tomoが面白い奴を見つけたと。演劇博物館で働いてて、喫煙所でタバコを巻いてるアラブ人みたいな男がいたから、ライブに誘ってみたってのがDaoud(Guitar)だったんですけど、見た目も強烈だし、なんか面白そうだったからライブ終わった後に「一緒にやらない?」って声かけたら、二つ返事で「いいよ」って。それから弟のRyu(Sitar/Keyboard)がシタールやってたことを思い出して、誘ってみたんです。
じゃあそこで現メンバーが揃ったと。でもしばらくは女性ボーカルのバンドだったんですね。
まあそんな感じでやってたので、レコーディングをやってみようってなったときに当日アンジーが来なくて、仕方ないからTomo歌えよみたいな感じで、今の体制になりました。
そのときからバンドの方向性みたいなのは決まっていたのですか?
みんなが好きな音楽がバラバラすぎて、こういうバンドを目指そうとかも特になかったですね。Tomoはアメリカ帰りで当時流行っていたヘヴィーな音楽を聴いてたし、Guyは民族音楽ばかり聴いたし、自分はちょうど60年代のサイケをよく聴いてるみたいな。自分はThe Incredible String Band とかを聴いていたので、そういう感じが頭の中にはありました。
その際(1st)のレコーディングはどんな感じだったのですか?
そもそもリリースするという目的ではなくて、デモ音源を作ってみようくらいの感じで録ることになったのですが、そのときレコーディングを手伝ってくれた友達が、「失敗してもいいから、全部1テイクでやってみたら?」って言ってくれて、本当に全部1テイクで録ってそれが結果1stになりました。そのレコーディングの前後でライブをやっていて、そのときの滅茶苦茶感が気に入っていて、それがそのまま形になった感じですね。あのときの自分たちの勢いとか拙い技術だからこその質感が出せたなと。
そのレコーディングでバンドの軸みたいなものができた、と。
そうですね。下手くそだったんですが、割とそのとき目指していた形にはなりました。ここからが急展開だったんですが、レコーディングを終えて、すぐバンドキャンプにあげたら突然ギリシャのレーベルからレコード出そうって連絡がきて、よく分からないまま出すことになりました。そうしているうちに海外のブログに取り上げられ始めて、その流れでオーストラリアのバンドからツアーやろうって連絡がきて、いきなり海外ツアーが決まったんです。それが2013年の9月かな。
Tree Smoke(1st Album『Kikagaku Moyo』)
その当時は日本でもライブを結構やっていたんですか?
日本でライブをやっていたんですが、ライブハウスのノルマに疑問を感じはじめていて…ライブやるのにお金がかかるってのが納得できないし、それって逆に言うとお金払えばライブできるってことで全然緊張感がない。そのシステム自体を変えたいと思ってノルマなしのライブハウスに片っ端から連絡して、渋谷のルビールームを見つけたんです。そこで「Austin Psych Fest」に因んで、「TOKYO PSYCH FEST」という名前のイベントを始めました。「Austin Psych Fest」に出たいっていうのがあったので、名前もフェスにして毎月やろうってなって。そこで自分たちが良いと思ったバンドを呼ぶ、日本人だとBOMBORIとか、他にも自分たちで海外からもバンド呼んだりとか。ここにたくさんのバンド出てもらったから、レーベルもやっちゃおうってなってやり始めたのが、Guruguru Brainという自分たちが運営しているレーベルですね。
2013年9月、初の海外ツアーはどんなものでしたか?
とりあえず呼ばれたからオーストラリアに行ったんです。ブリスベンのDreamtimeというサイケバンドが招いてくれたんですが、10日間でメルボルンからはじまって7、8都市をまわったんですが、自分たち的には最初のライブは緊張しててどうだろう?って感じだったのが、割と反応がよくて、それが自信になって、段々自分たちのパフォーマンスもよくなっていくのを感じられたんです。演奏云々というよりは、自分たちの勢いとかバンドの見せ方、振る舞い方みたいなものを学べた気がしますね。そのときから今でも変わってないことなんですけど、ライブの曲順とかも直前まで決めないんです。ジャムから発展させていって、そのときの空気で演奏するようにしています。このツアーでバンドの方向性が固まりましたね。
ツアーから帰ってきて2ndのレコーディングに入ったんですよね。
そうですね。しかもこのあたりからバンドメンバーで一緒に暮らし始めて、毎日がツアーみたいな日々を過ごすようになったんです。そういったこととか、バンドの方向性もオーストラリアで固まったということもあって、1stはとにかく「衝動」を音にした感じだったんですが、2ndはメンバーが持っているイメージを音にしていくという感じでしたね。しかもそのタイミングで狙っていた「Austin Psych Fest」から声がかかって、それもあって2ndの制作に取り掛かったという。
Kodama(2nd Album『Forest of Lost Children』)
目指していた「Austin Psych Fest」での感触はどうでした?
まずオースティンの前にも、砂漠でやる「Desert Daze」というフェスやL.Aのサイケフェスにも出演して、自分たちに対してそこまで興味のないお客さんに、2ndの楽曲も含めた上で、どういうパフォーマンスをすべきなのかっていうのが分かってきたっていうのと、広大なアメリカをバンでツアーするという経験を経て、バンドとして強くなった気がします。オーストラリアのときは、何も分からないまま終わってしまった感もあったけど、目標としていた「Austin Psych Fest」のステージに立ったこととか、いくつかのフェスに出て色んなアーティストと見たり、接したりしたことで、自分たちにもプロ意識が生まれました。あと嬉しかったのは、「Austin Psych Fest」のときのことなんですけど、終わった後にスタッフから聞いたんですが、ライブ後のレコードとTシャツの売り上げが3日間で一番多かったらしくて、一回のライブで自分たちに興味を持ってくれた人がたくさんいたんだなと。ここまで来たんだなという達成感はありました。そこからUKツアー(2014年)・EUツアー(2015年)を経て、色んな国、場所で演れたことで、今の「幾何学模様」が形作られていったと思いますね。
Live in Copenhagen, May 28th, 2015
そんな活動を経て、今年の5/13にGuruguru Brainから3rdアルバム『HOUSE IN THE TALL GRASS』が発売になりますが、今作はどんな作品になりましたか?
世界をまわりながら色んな音楽を聴いている中で、最近のレコードって「アルバム感」があまりないと感じるようになって、自分たちはコンセプチャルなアルバムを作りたいと思ったんです。これまではやっていくうちにコンセプトが見えてくるって感じの作り方だったんですが、今回は明確に録りたい音っていうのがありました。
それはどんな音だったんですか?
そもそも自分たちの聴く音楽が少し変わってきて、サイケというよりサウンドトラックみたいなものをよく聴くようになって、何でそういう音楽を好むようになったのかを掘り下げると、「音を聴いて情景が浮かぶ」ということだったんです。自分たちがツアーで世界中の色んな場所に行ったことも影響していると思うんですけど、そういう見た景色とかその空気感みたいなものを音にできないかと考えるようになって。
具体的な場所とか景色はあったんですか?
ツアーで行った北欧とか、アイスランドとか、そういうところの景色を音にしてみたいと思ったんです。メンバーとはずっと同じ場所に行って色んな景色を見てきたし、同じ映画も観てるし、そんなことをみんなと話しながら作り込んでいきました。自分たちはもともと言語から何かを持ってくるということはほぼなくて、基本はビジュアルとかイメージみたいなところを大事にしながら作るんですけど、今回のアルバムはそれが色濃く出たと思います。そういったところも含めて、1枚のアルバムとして今回のアルバムを聴いてもらえると嬉しいです。今全曲ストリーミング配信もしているので。
では長くなりましたが、最後に今後の活動について教えて下さい。
5月からEUツアーがはじまって、その後にはUSツアーもあります。結構過酷なスケジュールですが、いつも通り楽しみながらやれたらと思いますね。今回のアルバムをリリースしてからはじめてのツアーになるし、パリファッションウィークにも呼ばれていたりもするので、これまでと違った経験ができるんじゃないかと思っています。
日本での活動はどうですか?フェスに出演してみたいとか。
今呼んでくれるのが海外なので海外中心の活動になっていますが、特に海外だけで活動したいというわけではなくて、日本でももっとやっていきたいと思っています。日本のフェスにも出てみたいし、そこで自分たちがどういう受け入れられ方をするのかもみてみたいですね。海外より緊張しそうですが…。あとそれ以外にも日本人の色んなアーティストとコラボレーションしてみたいというのはあります。音楽だけでなくて、映像だったり、ファッションだったり、写真だったり。
INFORMATION:
EUROPE SUMMER 2016
『HOUSE IN THE TALL GRASS』(発売中)
http://gurugurubrain.bandcamp.com/album/house-in-the-tall-grass
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Interview by Shotaro Tsuda
Text & 提供by Qetic