国際的アーティスト、坂本龍一 音楽家としての軌跡を追う

15.July.2016 | MUSIC

「教授」の愛称で知られ、世界的な活動を行っている坂本龍一。その肩書きは幅広く、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、ピアニスト、そして出版活動や著書も多数、地方都市での芸術祭の芸術監督や、森林保全団体などの活動家としての一面も持っています。

1987年公開の映画「ラストエンペラー」で、日本人初のアカデミー作曲賞を受賞して以来、「世界のサカモト」とも呼ばれる存在に。国際的な認知度は日本でも屈指で、すでにご存知の人も多いでしょう。あえて紹介するのもおこがましいのですが、多岐に渡る活動から、音楽に関わる経歴を簡略にまとめてみました。

「世界のサカモト」の片鱗を見せていた幼少期

坂本は、1952生まれ。初めての作曲はなんと10歳のときで、家で預かったうさぎをテーマにした「うさぎのうた」だったといいます。幼稚園の頃からピアノを始め、この時のピアノの講師に勧められ、東京藝術大学作曲科教授の松本民之助さんに、作曲を学ぶようになります。この早熟さはさすが…と驚かずにはいられません。

音楽漬けの10代を過ごしているのかと思いきや、中学では一時スポーツ活動に熱中したようです。そして高校では、学生運動に身を投じています。これらの多様な経験は、後々の製作の基盤になったといいます。

YMOが大ブレイク! その傍らでソロ活動も

東京藝術大学に進学した坂本は、民族音楽や電子音楽を吸収しながら、作曲を学びます。そして1978年、在学中に細野晴臣に誘われ高橋幸宏と共に、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成。同年に1stアルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」を発表します。

1979年発売の2ndアルバム「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」は100万枚を超える大ヒット。YMOは80年代テクノブームの火付け役となり、華々しい活躍を見せますが、1983年に惜しまれつつ解散。その後1993年に再結成し、アルバム「テクノドン」を発表しています。今でもYMOの曲が多くの人を魅了し続けていることは、言うまでもありませんね。

最近のトピックで注目したいのは、ソロとして1978年にリリースした「千のナイフ」が、高音質のリマスタリング版として、2016年1月に再販されたことでしょう。手掛けたのはYMO結成と同年で、坂本が26歳のころ。当時の電子音楽や民族音楽への探求心が溢れる、鋭気を感じるものとなっています。

多彩な活動で、日本のカルチャーシーンをけん引

音楽家としてジャンルを問わず楽曲を手掛けてきましたが、多くのミュージシャンに影響を与えた曲として外せないのが、1983年に公開された「戦場のメリークリスマス」の映画音楽でしょう。美しい旋律の楽曲を提供し、英国アカデミー賞を受賞しています。

またミュージックシーンに大きく影響を与えたプロジェクトとして、2010年にコーディネーターとなり立ち上げた、音楽史を捉え直す試み「commmons: schola」が挙げられます。世界の伝統音楽や、クラシック、ロックなど多種多様な音楽文化を、次世代に向けた音楽の百科事典としてまとめていくもので、音楽業界で大きな反響となりました。

大病からの復帰、そして今

ショックを感じずにはいられなかったのは、2014年7月に中咽頭(いんとう)がんの発病が発表されたときでしょう。闘病に専念するために一度休業し、2015年8月2日に「母と暮せば」の映画音楽で復帰を果たします。合わせて映画「レヴェナント:蘇えりし者」でも、音楽をアルヴァ・ノトと担当し、第73回ゴールデン・グローブ賞の作曲賞にノミネートされています。

 

1990年に拠点をニューヨークに移し、ライフスタイルも含めて、幅広くメッセージを発信し続けている坂本龍一。現在64歳。今もカルチャーシーンに影響を与えながら、圧倒的なカリスマ性を放っています。

 

公式Facebook  https://www.facebook.com/ryuichisakamoto/
公式Twitter https://twitter.com/skmt09?lang=ja
commmons: schola http://www.commmons.com/schola/

 

文:石水典子(SHUTTER)

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