東京のトレンド発祥地といえば、きっと「原宿」がいち早く思い浮かぶだろう。地元国民、また遠い国から飛んできた外国人観光客たちからも愛されるこのファッション地区は、通るだけで若者のカルチャーやトレンドが早読みできてしまうスポット。

ただ「トレンド」にも落とし穴がある。というのも、「クール」の基準は一定でなく、常に変化を遂げている。きょう「クール」だったからって、あなたの「明日のクール」に保証はない。キャップがいつの間にかバケツハットの背景に追いやられ、静かに出現数を減らしていっているのを見れば、なんとなくトレンドのあり方がわかるだろう。原宿の何が「クール」なのかというと、その変わりいくトレンドの渦の真ん中にいながらも、廃れない影響力を持ち続けていることなのである。

で、原宿でいま波に乗っかっているトレンドは一体なんなの？

ファッション

1970年代に遡ろう。原宿とファッションが切っても切れない間柄になったのはちょうどこの頃。近年だと米アーティストのグウェン・ステファニーやニッキー・ミナージュなどの曲に「HARAJUKU」という言葉がファッションの類義語として掲げられるほど。

都内のみならず、国内で最もお洒落にフォーカスを当てた土地となっている原宿では、ストリートファッションも豊か。いまや道を歩いている一般人まで国内外の雑誌にスナップされるほど、ファッションを通して個性を主張する人々が道を行き交う。「原宿系」と呼ばれるファッションは、特定のスタイルではなく、自分の個性をいかに出せるかというところで試されている。

と、こう形容してみると「お洒落じゃないと原宿には染まれない」なんて印象を受けるかもしれないが、そんなことは気にせずお買い物にも最適な原宿にぜひ訪れてみてほしい。お洒落な洋服が手に入るお店であれば、ごまんとある。もちろん一際目立つエキセントリックな洋服もしっかり用意されているが、近年では「ノームコア」のゆるやかなブームに乗せ、シンプルなテイストを好むファッショニスタにも徹するお店が並ぶようになった。また、原宿のファッションを総括する「SPINNS」では、お手頃価格で間違いないアイテムがたくさん漁れるようになっている。とにかく豊富な選択肢を提供する原宿では、必ず自分のスタイルが見つけられるようにできているよう。

音楽

原宿と音楽が結び付けられたのは、ほんの最近のこと。というのも、原宿発祥のポップスターが生まれたことからその二つが濃い線で結ばれたのだ。その名もみなさんご存知の通り、きゃりーぱみゅぱみゅである。当時ファッションブロガー・モデルとして活躍していた彼女が、プロデューサーの中田ヤスタカとタックを組んだのは2011年のこと。愉快な遊び場が色鮮やかに映し出された「PonPonPon」でデビューを遂げたのは、みなさんの記憶にもまだ新しく残っているだろう。これを機に、ファッションの世界に席を置いていたきゃりーぱみゅぱみゅが音楽の世界にも足を踏み入れ、「世界のポップスター」として一気に飛躍していったのだ。

その後、彼女のあとを辿り、カラフルでポップなアーティストが次々と誕生。4人組ガールズバンドのSilent Siren、またYun*chiなどがそれらに該当する。彼女たちが送り出す原宿の音楽シーンというのは、エレクトロ寄りのキャッチーなポップチューン、そして何よりもお洒落であることにフォーカスが当てられている。原宿に「音楽」の側面が付け加えられたことで、原宿は最新のファッショントレンドを発掘する地のみならず、最新のポップアーテイストをも発掘できる場所として更なる一歩を踏み出したのだ。

フード

お洒落な人の数ほど原宿で目にするものといえば？

どこまで続いているの？と思わず尋ねたくなる、腹ペコなお買い物群が作る長い行列。いますぐ着たい洋服に並び、いますぐ食べたいおやつが見つけられちゃうのも原宿のミソ。その話題のスイーツも、原宿を歩き周り、列があるところに目をやれば、一眼でわかる。テレビ・雑誌・オンラインメディアなどと多方面で紹介され、莫大な話題性を生んだあのおやつ、ここにあり。

パンケーキにポップコーン、そして最近でいうと台湾発かき氷・・・またそれに加え、10月原宿に新たに加わったショッピング施設「CASCADE HARAJUKU」にお店を構えるロンドン発の「ローラズ・カップケーキ」も人気を誇るスイーツスポット。ただ、冒頭でも記した通り、トレンドは常に変化している。その人気がいつまで持つかはなんとも言えないところである。

ショッピング

原宿の最大の魅力は何か。聞くまでもない、お買い物です。裏の道に点在するいくつもの小さなお店に加え、ショッピングモールは大手ファッションブランドを構え、明治通りに面しているショッピングモール、Laforet（ラフォーレ）は常にファッション大好きっ子で溢れかえっている。

ただ原宿でのお買い物といえば、以前までは「洋服」に濃く結びついていたが、いまとなっては洋服以外のショッピングも盛んなのだとか。観光ビザの緩和もあり、日本の観光はうなぎ昇り。ぐんぐん観光客が増える中、原宿といえば、洋服のみならず、「お土産」集めの場所として色を塗り替えているのだ。例えば「和」な扇子だとか、くく、と笑ってしまうような面白グッズだとか、電子機器に使えるアクセサリー（iPhoneケース、その他もろもろ）、そしてキャンディー・・・

「ファッション」にスポットライトが当てられているという根本に変わりないが、原宿の魅力は、そのいく数ものお店を辿っていくと、必ず自分の個性をぐいっと表に押し出せるものが見つけられるところに潜んでいる。そのひとりひとりの個性こそが、「原宿の個性」を常に新鮮なものに塗り替えている。原宿の最大の面白みとは、そこなのかもしれない。